離婚調停とは?~後悔しないために知っておきたい基礎知識と対応法~
離婚を考えたとき、まず頭に浮かぶのは「話し合いで別れられるのか」「弁護士は必要なのか」という疑問かもしれません。協議離婚がうまくまとまれば、比較的スムーズに手続を進めることができます。しかし、意見がまとまらず、離婚の条件について争いがある場合には、家庭裁判所での「離婚調停」が重要な役割を果たします。今回は、浜松市をはじめとする静岡県西部地域で離婚事件に携わってきた弁護士の視点から、離婚調停の仕組みと流れ、注意点について解説します。

離婚調停とは?――調停前置主義というルール
離婚には「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つの方法がありますが、その中間段階にあたるのが「調停離婚」です。
民法では、離婚裁判を起こす前に、まず家庭裁判所で調停手続を行うことが原則とされています(これを「調停前置主義」といいます)。つまり、夫婦間での話し合いがこじれてしまった場合には、いきなり裁判を起こすことはできず、まずは調停を申し立てる必要があるのです。
離婚調停の流れ――実際の手続きはどう進む?
離婚調停は、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停申立書」を提出することから始まります。申立てが受理されると、1回目の調停期日が設定され、通知が届きます。
調停期日には、調停委員2名(通常は男女各1名)が交互に当事者の話を聴きながら進行します。調停委員会には裁判官も含まれますが、実際の調停室に立ち会うのは調停委員のみで、裁判官は事前協議や調停の終結時など、必要に応じて関与します。
原則として、当事者同士が顔を合わせることはありません。調停は個別に行われ、夫婦が交互に調停室に呼ばれて話をします。また、待機中も当事者同士が接触しないように、申立人と相手方で異なる待合室が用意されています。
さらに、DVやモラハラの事案など、当事者の安全や心理的負担への配慮が特に必要な場合には、家庭裁判所に申し出ることで、たとえば集合時間をずらす、待合室を別のフロアに分ける、別室で手続を行うなどの対応が取られることもあります。
調停では、以下のような点について話し合われます:
- 離婚に合意するかどうか
- 子どもの親権(未成年の子どもがいる場合)
- 養育費や面会交流の取り決め
- 財産分与・年金分割
- 慰謝料の有無や金額・支払方法
1回の調停期日は1時間前後で、月に1回程度のペースで進行します。平均して3~5回程度で合意に至るケースが多いですが、話し合いの内容や対立の程度によっては、さらに長引くこともあります。
調停での話し合いが不成立となったら?
調停はあくまで「話し合いの場」であり、当事者双方の合意がなければ成立しません。どちらかが離婚に強く反対している、あるいは条件面で折り合いがつかないといった場合には、「調停不成立」として手続が終了することになります。
調停が不成立となった場合には、次のステップとして家庭裁判所に訴訟(裁判)を提起することが可能となります。離婚裁判では、証拠の提出や主張立証活動が必要となり、調停以上に法的知識と準備が求められるため、弁護士の関与が不可欠となります。
なお、調停中に部分的な合意ができた事項(たとえば親権や養育費など)については、その内容が「調停調書」として文書化され、判決と同じ効力を持つことになります。
弁護士に依頼すべき?――本人申立てとの違い
離婚調停は、本人だけでも申し立てや出席が可能です。実際、静岡家庭裁判所浜松支部などでも、本人申立てによる手続は多く見られます。
もっとも、次のようなケースでは、弁護士に依頼することをおすすめしています。
- 相手に弁護士がついている
- 財産分与や慰謝料の金額に争いがある
- 親権や養育費など子どもに関する取り決めが重要
- DV・モラルハラスメントの被害がある
- 法的な見通しや交渉の進め方に不安がある
弁護士を代理人として選任することで、調停委員とのやり取りを的確に進めることができるほか、必要な資料の準備や条件面の整理、交渉戦略の立案なども含め、法的な側面から全面的なサポートを受けることができます。感情的な対立を避け、冷静に調停を進めたい場合にも有効です。
離婚調停に向けた準備――何をしておくべき?
離婚調停を円滑に進めるためには、事前の準備が欠かせません。とくに、次のような情報や資料をあらかじめ整理しておくと、調停委員にも状況が伝わりやすくなります。
- 家計の収支状況(生活費や教育費など)
- 預貯金・不動産・保険などの資産情報
- 年収に関する書類(源泉徴収票、確定申告書)
- 年金記録(年金分割を希望する場合)
- DV・モラハラの証拠(診断書、録音データ、メール等)
また、「親権をどちらが持つか」「財産分与をどのように考えるか」「面会交流をどう設けるか」など、自分自身の希望を明確にしておくことも重要です。弁護士と相談しながら条件を整理しておくことで、調停における発言にも一貫性が生まれます。
浜松や磐田など、静岡西部地域で離婚調停をお考えの方へ
浜松市をはじめとする静岡県西部地域(湖西市、磐田市、袋井市、森町など)にお住まいの方が離婚調停を申し立てる場合は、原則として静岡家庭裁判所浜松支部が管轄となります。所在地は浜松市中区中央にあり、JR浜松駅からも徒歩圏内とアクセスしやすい場所にあります。
地域に密着した法律事務所であれば、調停の実務や運用の傾向を把握しており、調停の進め方や必要な準備について、具体的なアドバイスを受けることができます。相手との交渉や調停委員への伝え方に不安がある方、適切な条件での離婚を目指したい方は、早めの法律相談をおすすめします。
まとめ――納得できる解決のために
離婚調停は、裁判とは異なり、当事者同士の合意を目指す話し合いの場です。しかし、その内容は今後の生活やお子さんの将来に大きく関わる重要な決定です。適切な準備と冷静な判断、そして必要に応じた専門家のサポートによって、後悔のない解決に近づくことができます。
離婚を考えている方、調停の申立てを受けた方、どちらの立場であっても、まずはお気軽にご相談ください。あなたの声に寄り添い、最善の方法を一緒に探していきます。