改正家族法の要点と解説1-共同親権制度の新設

離婚を考える際、最も心に重くのしかかるのは「子どもの親権」のことではないでしょうか。これまでの日本の法律では、離婚後は父母のどちらか一人が親権者になる「単独親権制度」しか認められていませんでした。しかし、令和6年に成立した改正法(令和8年5月23日までに施行)により、日本の家族のあり方は大きな転換期を迎えます。今回の記事では、新しく導入される「選択的共同親権」と、意見が食い違った際の新ルールについて詳しく解説します。

1.なぜ今、法改正が行われるのか

今回の法改正の背景には、社会情勢の変化があります。立法者は、父母の離婚が子どもに与える影響の顕在化や、養育のあり方の多様化を踏まえ、「子の利益(子どもの幸せ)」を最優先に保護するために改正を行ったと説明しています。そのため、今回の改正法では、親権は親の「権利」であるだけでなく、子に対する「義務」としての性質を持つことが明確にされました。

2.「選択的共同親権制度」の仕組み

改正法では、離婚の際、父母の協議によって「共同親権」か「単独親権」かを選べるようになりました。いわゆる「選択的共同親権制度」と呼ばれるものです。

共同親権を選ぶ場合:離婚後も父母双方が親権者となり、適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たします。

単独親権を選ぶ場合:父母のどちらか一方が親権者となります。もし父母の間で協議が調わない場合は、裁判所が判断を下すことになります。

3.裁判所が判断する際の基準

裁判所が「共同」か「単独」かを決める際には、以下の要素を総合的に考慮します。

1.父母と子との関係:これまでの親権行使の態様や子の意向など。

2.父と母との関係:親権の共同行使のために最低限必要な意思疎通ができる関係にあるかなど。

3.その他一切の事情:事案に顕れた一切の事情。

ただし、以下のような事情(必要的単独親権事由)がある場合には、子の安全を守るため、裁判所は必ず「単独親権」を定めなければなりません。

虐待のおそれ:父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。

DV・高葛藤:父母の一方が他方から暴力や有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあり、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。

協力関係の欠如:将来的に最低限の協力関係の構築すら望めず、親権の共同行使の前提となる協議を適切に行うことが期待できないとき。

4.共同親権下での「単独で行える行為」

「共同親権だと、些細なこともいちいち相手の許可が必要なの?」という不安の声をよく耳にします。しかし、日常生活を円滑に送るため、以下の場合はどちらか一方が単独で親権を行使できます。

監護及び教育に関する日常の行為:日々の生活の中で生じ、子に対して重大な影響を与えない行為(食事や服装の選択、通塾、通常のワクチン接種など)。

急迫の事情があるとき:父母の協議や裁判所の手続を経ていては適時に親権を行使できず、子の利益を害するおそれがある場合(DVからの避難、緊急の医療行為、期限の迫った入学手続など)。

一方で、居所の決定や進学先の選択など、子に重大な影響を与えるものは原則として二人で話し合って決めます。

5.意見が対立した時の救済策「親権行使者の指定」

どうしても意見がまとまらない特定の事項については、裁判所に申し立てて「その特定の事項についてだけ」単独で親権を行使できる人を指定してもらうことができます。

例えば、高校との在学契約の締結をめぐって父母の意見が対立している場合、裁判所が父母のいずれか一方を親権行使者として指定する審判を下します。これにより、協議がストップして子どもの不利益になる事態を防ぐことができます。

6.まとめ

今回の改正は、離婚後も父母双方が適切な形で子の養育に関わることが、子の心身の健全な発達に望ましいという理念に基づいています。ただし、共同親権にするか単独親権にするかは、個別の具体的な事情に即して、子の利益を最優先に考慮して判断されるものです。何よりも「わが子にとって、どの形が一番幸せか」を、新しい法律の枠組みの中で考えていくことが大切です。